スタンプラリー

 

夏のことをよく思い出す。思い出ではなくただの事実として。ああ、あのときもあんな風にぬいぐるみを抱えてソファーの上で怯えていたっけ、真っ暗な部屋の中で音楽に身を委ねていたっけ、と。あのときの症状と比べながら今を思う。今は何時間もかけてありったけの勇気を振り絞れば職場の最寄り駅まで辿り着けるようになった。その先はまた時間がかかるかもしれない。ひたすら怖い。

 

昨日何度も何度も繰り返し延々と「世界が終わる夜に」を聴いていた。チャットモンチーがそんなに好きじゃなかった中学生の頃、この曲だけは好きだった。今でもチャットモンチーで1番好きな曲。

何度も何度も聴くうちにようやく何日か前の悲しい気持ちが出てきて、少し泣いて、逃げたいなあと思って、良かったなあと思った。感情が戻りつつある。私が神様だったらこんな世界は作らなかったよ。あまりにも理不尽で、冷酷なんだもの。

 

昔々、私がまだ10代の頃から私の1番の味方で心の拠り所だったのは音楽だった。音楽の本質的な捉え方自体は年を経て徐々に変わっていっているけれど、好きだという事実は変わらない。どれだけ息苦しいときもとりあえずイヤホンで耳に音楽を。活字は読めなくても、漫画を1冊読むだけで胸が苦しくなっても、音楽だけは心にスーッと入ってくるから、それさえも聴けなくなってしまったら私はもう外界からの刺激全てを受け入れられなくなってしまうと思う。ちなみにそういうときも最近はたまにある。音楽すら聴けなくて、聴きたくなくて、睡眠に逃避してしまう日。

でも音楽があって良かった。音楽の美しさを感じ取れる自分で良かった。その気持ちは本当のこと。

 

だからカラオケスナックで働くのはとても楽しい。色々な音楽に触れられるから。自分の聴いたことがない曲、昭和歌謡、久しぶりに聴く曲、いろんな歌をいろんな人の表現で聴くことができるから。やっぱり私、音楽好きだなあって思えるから。

 

好きなものと一緒の空間が1番幸せだと思う。今はそう思う。その中で好きなものを分かち合える人と一緒に楽しくしていられたら良いよね。それだけ。もう仕事もプライベートもわからない。楽しいこと、好きなことをしていたいよね。それで生きたいよね。

 

生きたいよね。そう、生きたいよね。

私の心はちゃんとそこにある。だからそれを根拠にしてやる、大丈夫。生きていればとりあえず何とかなる。

 

と思っている。

本当は満たされないままズブズブ沈んでいく方が楽なのかもしれないけれど、でも敢えて不幸な道を選ぶよりも、私は大切な人と幸せに生きる道を選びたい。

自分の心との戦い。戦い?いや、煙草でも吸いながらゆったり喋るくらいが良いかな。それこそ好きな音楽をかけて。